遠くへ行きたい
nemaru

酔っ払って帰ってきて
電気のないほうの壁をペタペタして
ひとり
ほくそ笑む暗闇
今日も
話を振られて
うまく答えず
場を白けさせたシーンだけ
繋いで
ニューシネマパラダイスでずっと涙ぐんでいる
今日も
地下階段の脇に
黒板式のメニューが置いてある
クリップ式のライトが照らす色合いで
ポテトやチキンが
どこかのビュッフェでずっと保温されている気がする
今日も
夏休み
かんぽの宿
一番に起きたら
こっそりと部屋を出て
静まり返る
お菓子のプッシャーゲームの間を抜け
リノリウムの細い一本道の廊下を
裸足で
歩いていく
今日も
食堂の
周りは
いつも
緑で
もっと
遠くに行くつもりだった気がする
朝早く起きるのが特徴で
いつも永六輔的な人が電車に乗ってるのを朝5時に見てたから
カブトムシがいなくなる明るさに
寝癖の父が食べるチチヤスのヨーグルト
積まれた座布団とそれを巡っての謎の兄弟げんか
薄〜く
安心しながら
そこはかとなく
むかついていたのか
いつまで経っても
7時にならないから
もう始めちゃいましょうかいや
新年会は鳳凰の間でいいやもう
コート預けて
名前を書いて
弛緩した顔で
均衡の崩れたほおでみんな
ビール瓶持って
歩き回る
何してはるんですか
なんか仲良くなるような
ならんような
ドライアイスみたいな高揚感
しょったまま
みんな
帰っていく
疑いきれないし
信じきれもしないまま
表向き
くっつけた気になりながら
ないと思いながら
そんな人達の前で
自分だけは
なんとか
やりおおせた自信だけが残り
つまり残らない
栞のように
挟ん挟んで挟んできて
実は
挟まれてたかもしれない
信号待ちの思案
右折待ちの車に
よれよれの蛇みたいな白線が映り込んでいる
ヤマトレディが帽子の後ろから
茶髪のポニーテールを揺らしている
別の生き物
夏の自転車の漕ぎ方で
若い娘が尻を浮かせていて
入道雲が発達せざるを得ない
配電盤の上にスロットのメダルが一枚乗っていて
昨日の雨が表面張力でこんもりと残っている
100円かもしれないのに
近づいて見なくても
分かるんだ
もう
何回か
土手を
組んず解れつの
転がり落ち方をしながらも
なんだか
一個の告白をしないことには
傷つけないことに
就中
身を焦がしていて
それでもなお
角刈りでお願いします
いや
夏のゴミ収集車
いや
のぼり坂の向こうから
いや確かに
子どもの頃には
空が翳ると
どーんという
音が鳴った気がするのだが
今日も
マッサージと称した
ただの打撃を肩に受けながら
思い出すように
憤怒が溜まってって
表に停めた自転車の
スタンド蹴ったときに
なんとなく見る
青い空を
イメージできるほど体が軽くなっていて
キョーレオピンののぼりから
オードムーゲののぼりまで
ずっと往復している
そして
これからも
ジェットソン
いちもつもジェットソン
ほとぼりもジェットソン
大阪から泉佐野ジェットソン
今日も
柴犬の尻尾がたくさん
落ちていて
もうそれを踏んでしか帰れない
ルール変更に泣く娘
5年後に抱く感じ
避難を余儀なくされ
ここに
意味もなく残る感じ
中島義道を読んだのなら
大学は
夏の陣に突入する

みすぼらしいと
会うのがつらい
雨の日にも
よれよれのシャツの日にも

久しぶりだったが
おやじと母の出身地を
ひっくり返しただけで
あとは正確に覚えてくれていた
その続きを尋ねられ
知らない
知ろうともしない

それはそれで大変そう
と言った
おまえに
そのお返しを
しなかったのが悔やまれり

腹の底から
どうでもいい
女の子に
キヨスクのご当地キティちゃんを
あげる

とほほ顔の
中間管理職の
筋肉が駆け巡る野山や女

なにもかも
喉の奥で
ぽしゃらせざるを得ない
すっぽ抜けた空気だけが共感できる

また
幕末の話がしたい
るろうに剣心の話がしたい

さぁ
ラスボスをどう始末するか
そんな相談が
毎晩繰り返される
滅びの村で
寝て
起きて
終盤に
こんなにうら寂しい村があるのは
きっと
あれだろう
演出ではなくて
単に容量が足りなくなった
だけなのだろうと
RPGツクールを始めてから
ずっと
そう信じてた
誰も後先なんか考えないと

なぜ
ゲットした嫁は常に軽い鬱なのか
手で握ったオイカワなのか
良い買い物をしたいのに
じっくりできずに
マラソンのドリンクのように出会い
もぎとるからか
最愛
は無理
たまに疑義も呈してみたくなるから
でも煙る
嫁も子どもも
煙りそうになる
煙い
霧みたいな愛しさでしゃべっている

窓に
卵が
投げつけられたのは
通りを挟んで
三軒南
二人目が
産まれたその目に宿る不安を解消すべく
俺が
犯人になっちまおうかと思った
プリキュアを
見ない事だけが生き甲斐だったのに
角度が衰えてきた気がして
今日は
デスクに座りながら
ひたすら尿道の開け閉めをしていた
括約筋が疲労して
少しずつ漏らしながら
歩く
帰り道
ここ
酒屋さんやったよな
と言った直後の駐車場が
本当の酒屋があった場所だった
今日もまだ
島田紳助が大画面テレビでコナン君が
まるで隠れていないように見えたと
人間曼荼羅で
話していたのを
覚えている
東京の
おじさんは
会話が途切れない
怯えの原理の埋め立て地の末路
ひどい甘えに見え
妻の頭痛がする
血管に植えつけられ
リンパが悪くなっていく
ずっと尊属殺
きっと尊属殺
たまにキラッとする

古いアルバム
癖になり

手酌でね
いつか



自由詩 遠くへ行きたい Copyright nemaru 2015-07-31 00:33:51
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