倦怠感
凍月


白い霧に覆われて色褪せた世界
山と街に被さっている
蝉と暑さと湿度が
どうしようもない倦怠を引き連れる
他にも排気ガスの熱風とか
首の無い鳩の死体とか
濁った川の流れとか
何でも無い小さな因子だけど
僕の足首を掴んでいる
振り払う気力なんてありはしない
雲はどんなに重くくすんでいても
それでも宙に浮く
だけど
心は重ければ落ちてゆく
僕の立つ地上へ泥のような地上へ


ふと見上げた空に現れた
推定1/9π 切り取られた虹の欠片
空の隙間から見えたそれだけじゃ
僕達の心は塗り替えられない
鈍痛みたいな疲れは振り払えない

あんなに綺麗だったのに
みんなアスファルトを睨み付けてる
誰も気付いていなかった
汗を拭うのに必死で
ただただ義務みたいに
足を前後させていた






自由詩 倦怠感 Copyright 凍月 2015-07-29 22:34:07
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