湿りと熱とを排して
日々野いずる
私の心はいつまでも若くいたいといっていた
それを枯れた体が巻き込んでしまい
くすぶり湿った一部を置いて
あとは全部干からびさせてしまった
枯れ木から思い出は零れ落ち
伝えきれるはずの想いは風に散らされ
わずかに残った欠片ばかり繰り返し蘇る
同じ話しかできぬようになる
それでも
生きていた軌跡を残すのに
孫を捕まえては
手を握り
熱を伝えて
湿った口調で
話す
とうとうその日が来た
ふっと軽くなる体
重石をとったように
空をかけていくことができた
何も気にせず、何も気にせず
そこにあったくすぶりはどこかにいってしまった
魂が抜け落ちると
空虚さを漂わす穴あきの話だけが残り
そこにあった湿りはどこかにいってしまった
お題:老いてもなお