手のひら
あおい満月

わたしのなかの、
異質さをみつめる。
わたし自身が異質だから
何が異質なのかわからない。

硝子窓に石をぶつける。
窓に罅がはいる。
わたしのなかの
罅はなにか。

見えない孔に
釘を入れていく。
釘はどんどん、
奥へ奥へ入っていく。

(ご自身の内へお入りなさい)

ドイツの詩人
ライナァ・マリア・リルケのことば。

釘がとまる。
すると視界一杯に
満天の星空がみえる。
どれもひび割れた星たち。
異質な黒い光を放つ。
異臭がする。
釘から放たれる砂鉄の臭い。
砂鉄に映る灰色の街並み。
スクランブル交差点には、
能面をまとった青年たちが
足早に歩いていて、
そのなかに引きずりながら歩く
わたしがいて。
わたしの背中には
何本もの釘が刺さっている。
他の人間たちの背中も釘だらけだ
しかし、
血は流れていない。

(ご自身の内へお入りなさい)

それは多分、
皆自身の内側を探して
迷い込んで、
出口を探して、
釘だらけにしてしまったのだ。

(本当の内側とはなんですか)

風が駆け抜ける。
白い羽根がひらり
手のひらに舞い落ちる。


自由詩 手のひら Copyright あおい満月 2015-07-28 18:25:30
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