誇りのために、あるいは怒りのために
凍湖(とおこ)

できるならば、あの葉脈に、幹に忍び込み
同じように呼吸し、尋ねたい。

棘(いばら)したたるみどりに囲われて
整然と並ぶ長屋と、神社とお寺とおはかがあり、子は決して生まれず、入り口があって出口はない場所で、
うばわれた人びとの、曲がった手で育てられた、堂々とした体躯の、黒い木々たちに。
このちいさく閑静なむらに沈められた人びとの、棘(いばら)に掻き消された喉奥の叫びを。



みらいやきぼうと呼ばれるものを、どのように堕胎し、堕胎させられ、また孕んだのか。
すべてを覆う小市民的で、善良な見知らぬ隣人たちの、巨大な手で轢き千切られた
おのれどもと、どのように再会し、また抱き集めたのか。



今も今も、殖えすぎた子猫のように、余計なものとして
親(ちかし)い人の手で、おのれが籠に閉ざされ、溺死するのを
なすすべもなく見守っている人びとが
姿をかえて生きている。

だから!わたしにも、教えてほしい。
浮かび上がったその人の、まなざしを。見据えた一点を。


自由詩 誇りのために、あるいは怒りのために Copyright 凍湖(とおこ) 2015-07-25 02:15:34
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