火葬場
草野大悟2

股関節にくるまれた
まるい歩みが
つや消しの宇宙に
冷却する。
 (恥ずかしげ、に

船賃六文
、なんて
いまどき
、ないから。
 (百五十円、でどう? 船頭さん

二年まえに
牛がわたった河原
、の向こう、
空の底に
いちめんの花、花、花、
花、いちめんの。
 (そよぐ静寂

探す煙は
形のない森を漂い、
空をぬけ、
紅蓮の炎は、
八十八歳の喉仏を
ベージュ色に
灼熱する。
 (うつむく言葉たちよ

腰の曲がった
虎と牛の、
笑い声が、
白く湿ってゆく
刻のながれ。

あかね色の風のなか
今日も
目覚めている
、という夢をみている。


自由詩 火葬場 Copyright 草野大悟2 2015-07-23 23:31:11
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