はとホテル
藤鈴呼



俺の領域に 入って来るな
ぽっぽー

汽笛を鳴らすな 五月蠅いぞと
がなる灯台 睨みつけて 三分停止

自動扉が 開いたら
また 駆け出せる

硝子張り
外からは 丸見え

何を喋っているのかだけが
かろうじて 檻の中

表情で 解る
氷上を 滑る

こんな 季節だから
鳩だって 暑いのでしょう

一時間置きに 能天気に
ポッポーなんて
啼いて られないの

カリッと 小気味良い音で
ポッキー かじるように
折れてしまった 鍵穴を
探す

見つかった羽根は
毟り取られた後では
二度と 戻らないのに

欄干を 震わせて
泪の代わりに 認めた
ハトの 溜息

見えますか
聞こえませんか
知らんぷり してみますか

だって あなたは
悪くないんですもの

ええ わたくしだって
そう 思って いましてよ

今まで 一度たりとも
責め立てたことなど ありませんと
ぽっぽー ぽっぽー

溜息と 汽笛が 
奇妙な具合に混ざる 海沿いの街は
とても 素敵

今度は 何を 待ちましょうか
おとぼけ顔で 考えてます

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自由詩 はとホテル Copyright 藤鈴呼 2015-07-23 05:38:55
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