あの山越えて
あおば

           150722

中三の音楽の授業中のことでしたが、
子守唄を教わっていた。
と言っても教科書の楽譜を見ながら
皆で合唱するだけなのだが
理論はともかく
一度唄えば覚えてしまう時期だったから
先生はそれでも良いと考えたのか
学習指導要領に書いてあったか知りませんが
先生はまだ存命と聞きますから
いざとなったら確認してもいいですが
果たして本当のことを語るかどうかはわかりません
シューベルトの子守唄やら何曲か歌った後は
中国地方の子守唄
女子の整った合唱を聞いているとわれら男子はただ声を
音符に乗せて合わせているだけで、味も素っ気もありません
こいつらは、もう母親になる声の準備が完全に出来上がっている
油断も空きもありませんがとても頭が上がりません
傍に若い母親軍団が幼い男子供をあやしている
そんな悔しい実感を覚えたのですが
その実、こいつらは普段は喧しく、黄色い声を張り上げ
ちゃっかりやりたい放題の気ままな奴らでありまして
世の中一体どうなんっているんだろう
中国地方の山を越す坂道で滑って転んで、リュックの底に入れてあった
偏向ゴーグルを割ってしまったのはそれからずいぶん時が経っていて
周囲には、女子中学生はおろか、人っ子一人いないなだらかな山道であり
山道降りて鉄道の駅に辿り着き、険しい峠は列車に乗って超えたのは今まで
誰にも語ったことは有りません。


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/





自由詩 あの山越えて Copyright あおば 2015-07-22 21:31:20
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