あの山越えて/即興ゴルコンダ(仮)投稿.56
こうだたけみ
ここ二日でひと山越えた感のあるわたしたちは
次の山あるいは谷を想像できないでいる
見上げる山 天辺が雲に隠れて見えないほど
見下ろす谷 闇へかき消えるほど底なしの
ジェットコースターは外からコースが見えること
によって安心して怖がれるのだと思い知るわたし
たちはただポカンとして目に見えない山あるいは
谷の訪れを待っているここで
山が上下に分かれれば峠
峠を越せば広がる里
さとはうつくしいか
うつくしくしあわせか
みのりあるか 秋
玉のようにうつくしい
娘であった母だけが
左右非対称の印を持つ
あの、山を越えたい