仄暗い公園で
ベンジャミン

仄暗い公園のベンチで
みかんの皮を食べろと言われている老人が
喜んでと言って頬張っていたのは新聞紙
これでいいですかとにこにこしながら
鳩の目で少年たちを睨みつける

ぽおっぽっぽっぽ ぽおっぽっぽっぽ

ブルーシートを羽にしてパーカーのフードを頭にひっかけて
老人は首を上下に振りながらスキップ
足が悪いのかポップコーンにもつまづいている
ヒップポップを知らない老人は
少年たちの身のこなしには追いつけない
それは悲しいはずなのに
少年たちを追い駆ける老人は幸せに満ちていた

ぽおっぽっぽっぽ ぽおっぽっぽっぽ

人の言葉を忘れたような叫び声をあげて
それでも返事を待っている
気がつけば老人は少年たちの遠巻きな渦の中
投げつけられた煙草の吸殻を不思議そうに眺めていた
冷めた笑いに後押しされるように
あいかわらず首を上下に振りながらスキップ

それは一瞬の出来事だった

ぽおっぽっぽっぽ とぅるっくー!

悪い足には見合わない軽いステップをきざむと
老人はあっというまに空に舞い上がった
輪になった少年たちは見上げた首をくるくる回し
舞い上がった老人は輪を描いてさらに高く昇ってゆく

誰も知らなかったんだ
老人がこんなにきれいに飛べるってことを

仄暗い公園で
それが奇跡でないことにも
みんなはやっぱり気づいていない

老人のブルーシートが本当の空だってことにも





自由詩 仄暗い公園で Copyright ベンジャミン 2005-02-12 04:58:11縦
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