おしえて のすたる爺
るるりら

ふいに 風がカーテンをゆらし
とおいあの頃が 窓の外にある 気がした
みわたすかぎりの原っぱの向こう側には
そこなし沼に こわれかけの小舟が一双
沼を取り囲む山に続く なぞの けもの道

おとこのこたちとしか 遊ばなかった
虫たちとの無残な遊びには ついていけなかったけれど
それでも まいにち いっしょに 
かならず なまきずをどこかに こしらえ
たがいの傷をなめあうと、 わらえた

転校して 建物でどこの空も四角くでしか
見る事のできない街で暮らすようになり、
これまでに見たこと感じたこと 
そのままを口にすると クラスの子たちは 
私をおおかみおんなと呼んだ
それが良いことなのか悪いことなのか 
意味すらも 尋ねる気がうせて
口をつぐんだ。
そして しばらくして
次に 私についた あだなは がりべんちゃんだった

がりべんは いけないことなのか 
それとも良いことなのか 分からなかった
ときどき 狼のように野山を駆け回ったことを
想った

良いけものと のけものは似ている
良い者と 良い けものは 違うのだろうか 
どれも にたようなものだ

わたしは いまでは、
良い けものに ときどき なりたくなる
良いのけものにも なれるものなら なってみたい
がりべんちゃんに だって なってみたい

それは なぜだろう
もともと それらはすべて私の呼び名だったのに


自由詩 おしえて のすたる爺 Copyright るるりら 2015-07-14 11:06:38
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