ロマンス係数X
初谷むい




絵みたいな笑顔だったよ午後四時に染まったぼくらの玩具の手錠



騙されるのもいいねってきみが言う 野球部とすれ違う うそつき



最後かもしれない名前を連呼する北18条駅でロマンス



ウイルスのように欠伸をうつしたい抱擁するには距離が足りない



きみが口開いて笑う穏やかにさみしくなれる 聞いて、雷鳴。



届かない言葉としての心臓だ 触れない背中に浮かぶ汗染み



ごめんって意味もなく言うくらがりの耳殻に赤く透けてる明かり



観覧車立て籠もりたい宇宙一またたくハイジャッカーになろうよ



快晴がつくる逆光きみの名を一生覚えている気がするな




短歌 ロマンス係数X Copyright 初谷むい 2015-07-11 15:13:10
notebook Home 戻る