Coffee & Cigarettes/即興ゴルコンダ(仮)投稿.53
こうだたけみ

私がコーヒーをブラックでも飲めることを、彼はまだ知らない。砂糖と牛乳がないと飲めないって言ってたあの頃のまま時が止まっていればいいのにね。一人の生活者の痕跡は、部屋中の壁に黄色い染みとなって残るから、雑巾が何枚あっても足りないと思い知る。脂。冷蔵庫を擦りつづける。汗をかく。まだ泣かない。始めたばかりだから私たち。その日の夜、私は記録者になることを決めた。たぶんそう長くはないであろう出来事の細部までを覚えておくために。文字を書き綴ることを選んだ十八の時から、こうなることは決まっていたのだと思う。彼を中心として、その周辺がどのような動きを見せるのか。考え得る限りの視点から見ていたい。他ならぬ、私自身のために。そして魚がするりと寄り添って少しだけ泣かせてもらう。曖昧なままここまできたけれど今だけは。

それでもさかなのえいようあなどれないないとおいてかれるのわたし

かなしみがおかしみになるひょうはくざいねなしぐさつみほろぼしに


自由詩 Coffee & Cigarettes/即興ゴルコンダ(仮)投稿.53 Copyright こうだたけみ 2015-07-11 01:49:26
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