きよくて立派でどうでもいい
ユッカ

寝ればすべてがよくなってしまって、いつの間にか荷物の置場がなくなっているから、いつも夜が明けてしまう前に、済ませておかないといけないことがたくさん、たくさん朝に有り余る。


仕事に行って朝いちばんにやることは、珈琲をいれること。そんなことでお金をもらっているのがすこしおかしい。おかしいと思うことはたくさんあるけれど、まだ人のきもちがわからないせいなのかもしれないから、我慢する。これは大学におけるサービス業。接待。いちばん最初にルールを考えた人のきもちが、わたしにはほとんどわからない。わからないなりにやるしかないと言われるけど、それもよくわからない。先生に飲み物を出すのは義務だから、わたしは珈琲メーカーになっている。それはやさしさのためにあるはずだけど、やさしいのなんて珈琲の匂いくらいで、それ以外は全部でまかせ。珈琲を出せば出す程、愛をサボってしまう。百回の珈琲が、わたしに愛を百回サボらせる。そんなはずじゃないのに。わかっているけどやりきれない。

そういえば、珈琲を自分でいれてくれる先生がいて、まだ一度もお礼を言えていない。お礼を言いたい、と思う。この前、「僕は研究室の人に珈琲やお茶を出させるの、反対なんです。もっといい仕事に時間を…(つかったほうがいいのに)」と言われて、ああでも、珈琲を出すのが仕事のほとんどなので、とは言えなかった。

望まれてもいないものを与えることはやさしさなんだろうか。困る。荷物が余っていると思う。ここに、これ以上いてはいけないと思う。わたしにはわたしの荷物が、むこうにはむこうの荷物があって、珈琲はその間をつなぐためにあるはずなのに、わざわざ荷物をおろさせて、ちょっと待たせて珈琲を飲んでもらったりして、もう大人なんかやめて、どいつもこいつも、バカなんじゃないのって笑いたい。


散文(批評随筆小説等) きよくて立派でどうでもいい Copyright ユッカ 2015-07-11 00:17:27
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