@Apple
藤原絵理子



次元のない町を 不特定多数のキャベツが行き交う
少しずつフォントが違う それが個性だと思っている
のっぺりした集団が 通り過ぎたあとに
数え切れない#が散乱する 通路に階段に


意味があることだと信じて 撒き散らせた#は
踏み潰されて 混ざって 汚らしい色に
ただの醜いゴミになる 湿って重たいゴミ
腐敗臭の充満した 清掃工場の奈落に


キャベツの指には 指紋がない
林檎の陰謀に まんまと引っかかって すりすりと
ガラス板を擦っているうちに 失くなってしまった


夜も昼もない 無次元の町には
ざっざっざと足音が響く 軍靴のような キャベツの行進
匿名のヴェールに隠れて 真っ直ぐに彷徨っている



自由詩 @Apple Copyright 藤原絵理子 2015-07-10 22:52:43
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