風車
もっぷ

うそみたいなほんとの世界には
油っこい湯気が立ってて
空ばっかりは複雑なうそみたいで
みあげる余裕なく午後五時半
いつものあきらめがまた

かならずあしたも東京の夏です
と念を押されて泣きそうな帰り道
たどり着いた部屋のポストの口から
コスモスが覗いていた

もちろんわたしは
秋の花を抱きしめて
部屋にはいるとそこは
風車のある風景

しってる顔があって
やあ、と挨拶しあうのは
きのうとおんなじで
そういえばずっとそうだったなと
みおぼえのある風車の横の
わが家に落ち着いて

今夜はジャガイモのスープにしようと
でもその前に今朝しぼっておいた
うちの仔のミルクをいただいて
ひと息ついて風を聴く



自由詩 風車 Copyright もっぷ 2015-07-10 12:29:02
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