星合/即興ゴルコンダ(仮)投稿.52
こうだたけみ

親指以外の四本の指を折り曲げて爪を揃えて確認
する癖があるのだけれど、ラクダの彼はその上に
自分の揃えた爪を重ね合わせるような素振りをし
た電車の長い座席に隣り合わせて犬の前足みたい
だったんだっけそれはお手って唐突に思い出され
てそのときはただただ慌てたのだけれどあれが私
の人生のハイライトだったんじゃないかって疑っ
てる、それで彼の吸ってたタバコがhi-liteなら
よかったのに残念ながらPeaceだった何もなかっ
た平和だったね無駄にねよく日の当たる場所にて。

親指からじゃなく小指側から指折り数えるのは魚
の顔した彼のほうで、突き指ばかりで小指がうま
く握り込めない私は器用だなあと驚いたりしてる
いまだに名前に羊の住む二人が未年に群れをなし
干支は一周するのに私うまく回れない舞われない
からキリキリ舞いするならいっそ死んでしまえば
よろこんでくれるのに夜長姫「好きなものは呪う
か殺すか争うかしなければならないのよ」だって
あなたもそう思うのあわれな会われない羊たち。

親指姫が乗っていたのはなんの花だったっけって
話をしたのは従姉妹との女子会だったからあなた
は知らないそのチューリップが何色だったか綺麗
だったか枯れていたかも知らなくていいたくさん
の花言葉を持つその花がどのような姿をしてるか
なんて私だけが知っていれば花と遊ぶことを生業
とする人々が七夕の笹をつけた竹を解体した夜、
そのひとに見た面影が誰だったかなんてことは。
星は、きっと雲の上で合わされ。


※カギカッコ部分は坂口安吾「夜長姫と耳男」より引用


自由詩 星合/即興ゴルコンダ(仮)投稿.52 Copyright こうだたけみ 2015-07-08 21:07:43
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