父へ
川瀬杏香

中学生の頃のよう
なんとも言えぬ息苦しさに耐えてます
あの頃もてんかん発作に怯え
呼吸のしかたが分からなくなりました
あれから十年以上たったのに
今はがんが怖くなりました
いいえ、ずっと怖かったのです
父の命を奪ったがんでした
いつかわたしもと心の奥で怯えてました

だから助けてくれたのは父でしょう

以前、父の形見の車に乗車中
4トントラックに追突された時も
父が守ってくれたのでしょう

父はとても短気で繊細で達筆な人でした
想いが通じなければ御膳の箸を投げ
日曜大工をする時は一寸の狂いにも納得せず
手紙を書くときは決まって広辞苑を引き
誤字も許さない
自分に厳しい人でした

肩車をしてくれて詰め将棋で負けてくれた
大好きな車を一緒に洗車した時
家族で日帰り旅行中、道を尋ねて
いつの間にか尋ねた相手と話し込んでいたり
社交的なところも

わたしは受け継いでいるのでしょうか
今はさっぱり分かりませんが

あの日、お父さんなんて大っ嫌い
死ねばいいのに
なんて言って、ごめんなさい

子供心に、そう言わなければ母に見捨てられ
生きていけないと思いました
どちらにしても母とは、心は離れたのだけど

この気持ちさえ、何時か昇華出来る日が来て
わたし自身も含め
すべてを許せるようになる日が来るのでしょうか


2015/07/07


自由詩 父へ Copyright 川瀬杏香 2015-07-07 23:59:58
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