水辺 越音
木立 悟
緑の通りは影にあふれ
小さな原には誰もいない
橋の上には足音の波
波を押し出す風ばかり
空から橋
橋から原
幾つかの歪みが立つ境いめに
音は残り またたいている
通りから通りへ
影たちが去ると
真昼の前の
一度だけの
静けさが来る
地図に降る雨
乾く速さで
すぎてゆく声
同じかたちの
舟のはざま
雪のような生きものが
小さな原に現われては消える
入江の光が
橋脚をのぼる
冷えたものがあたたまり
原と径の手のひらをすぎ
音は止み 音はつづき
地図は
橋より高く飛び去ってゆく
自由詩
水辺 越音
Copyright
木立 悟
2015-07-07 19:53:39
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