シクラメンの自殺
よるのまち
100円均一の菓子缶を開けるといつだってシクラメン香る、死臭漂うあの日の午後に排出される
・記憶さがし
障害者年金でレンタルした自動ベッドを上下に動かす音と同時に命の軋む音がする
目と目で通じ合えるのは宇宙人くらいだねって微笑んだ
半分笑って、半分泣いた顔をしていたね
側に添えられるように、
あなたのシクラメン、枯れていた
・ますます尖ってゆく刃物の眩しさ
そしてあの人の脳みそが萎縮してゆく衝動
・午後の静かな庭にて
ダニの死んだ香りが頭上から降り注いでいる
舞い散る粉塵の中
荒れた庭で食事をした
足元を走るネズミたちが
腐り始めた脚の調理について話して、騒がしい
・睫毛が結ばれていて綺麗だね
・シクラメンの自殺
とうとう今夜決行すると
枯れたシクラメンは他のシクラメンを殺したあとに高らかと宣言した
街灯の中にもシクラメンたちの姿はもちろんないのに、革命家気取りのシクラメン
瞳はらんらんと輝いていて、蔓にはカモシカの腐った右足を巻きつけていた
彼の他にはもういない
シクラメンの楽園
その全貌を知り得るのは
遠くの大地にいるネズミたちだけ