記憶
ヒヤシンス


 四季の巡り会わせに机上の万年筆は時を刻む。
 古びたノートから溢れてくる言葉達は
 オルゴールの音色と共に空間に放たれる。
 胸躍らせた他人の言葉に思い出が宿る。

 雨に濡れた紫陽花に先達の筆が冴える。
 一言も逃すまいと思い切り手を伸ばすが
 シャボン玉のように触れると消えてしまう。
 ふと目をそらすと壁にはサーカスの絵が飾ってある。

 きっかけは朝だった。
 昼にはクラシック音楽がレコードから流れてくる。
 夜には明日への秘め事が隠されているのだ。

 珈琲を飲みながらある詩の意味を考えている。
 もし意味がわかれば私は病んでいるのだ。
 万年筆のキャップに祖母の命日が刻まれている。


自由詩 記憶 Copyright ヒヤシンス 2015-07-05 04:31:28
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