記憶
ヒヤシンス
四季の巡り会わせに机上の万年筆は時を刻む。
古びたノートから溢れてくる言葉達は
オルゴールの音色と共に空間に放たれる。
胸躍らせた他人の言葉に思い出が宿る。
雨に濡れた紫陽花に先達の筆が冴える。
一言も逃すまいと思い切り手を伸ばすが
シャボン玉のように触れると消えてしまう。
ふと目をそらすと壁にはサーカスの絵が飾ってある。
きっかけは朝だった。
昼にはクラシック音楽がレコードから流れてくる。
夜には明日への秘め事が隠されているのだ。
珈琲を飲みながらある詩の意味を考えている。
もし意味がわかれば私は病んでいるのだ。
万年筆のキャップに祖母の命日が刻まれている。