追分より
ヒヤシンス


 活火山の麓の村より我が半身 便りを寄越す。
 初夏の訪れより早く来るが良いですよ。
 ヴァイオリンのたなびく村はここです。
 フレームに収まらない風景はここです。

 屋根裏でチェロを奏でる老男爵の耳は聞こえず。
 瞳を凝らせば浮き彫りになる人間模様。
 ダージリンティーが好きな老婦人は
 今日も話し相手を探しているようです。

 笹の葉はここでは手に入らないから持って来いという。
 七夕なんていう行事はすっかり忘れてしまったよ。
 ただ時間は存在を明確にするのです。

 すること全てに意味を見出そうとしている人は
 この村にはいませんよ。
 ただ貴方がここにいるという事が全ての出来事でありますでしょう。


自由詩 追分より Copyright ヒヤシンス 2015-07-05 03:54:17
notebook Home 戻る