父の慮り。(おもんぱかり。)
梓ゆい
「人の、役に立つ事を考えなさい。」
ある晩
淹れたてのお茶をすすりながら
父は諭すように言った。
今でも
(何があるのか?何なのか?)を片隅に置いて
職場の受話器を取り
職場のパソコンを触る。
父の湯飲みが割れ
その役目を終えて新聞紙に包まれても
「私は、その意味を探し続ける。」
人の思考は、一秒単位で変化をすると認識をして。
(生きてゆくというのは、終わりの無い大躍進だ。)
老いて動かぬ身体の代わりに
蓄積された知恵と技術と人となりで
命の糸を繋ぎ留めてゆくのだろう。
(それでも、父は私を叱る。)
「解かったつもりにはなるな。」と
いつもの湯飲みで茶をすすり
目いっぱい口元を緩めて。