居留守
もり

明日の自分に
電話をかける
一枚しか入れない
呼び出し音がつづく
あいつは出ない
いつものことだ
今日よりずっと昔の
思いでごっこに忙しい
呼び出し音がつづく

しょうがなく
昨日の自分に
電話をかける
十円玉を積む
こいつはおしゃべり
教えてくれよ、と言うている
おれが今日なすべきこと
教えてくれよ、
あの娘をおとした一言を

ベタつく受話器が
少しずつ 耳から 離れる
窓の外
遠くあぜ道のあたり
男がひとり歩いている


自由詩 居留守 Copyright もり 2015-06-27 22:50:28
notebook Home