十字架が浮かぶ島
あおい満月

ビニール袋に
丸く尖ったものを
詰めていく。
手のひらは赤く腫れ上がる。
丸く尖ったものは殖えていくばかり。
急いで袋に詰めていく。
やがて袋に丸いものの先で刺した穴が開く。
穴はすきりれて、
丸いものと一緒になる。
すきりれたビニール袋も尖っていく。
やがて丸は
三角になる。



何故、
身体を求めあうのか。
そこには美学なとない。
あらゆる刃を掻い潜り
欲しいものだけを求めていく。
掴みあった腕と腕が
手探りですすむ先には、
焔になって、
揺らぐ瞬間がある、

**

左腕が切れる。
ブレスレットが切れる。
一つの命が切れる。
約束は、
交わすたびに切れていく。
音のない床に落ちていく石は、
拾い上げるとくすんでいる。
切れたものには
眠りをあたえよう。
白い海のなかの洞窟のさかなたちは
呼吸をしながら
声をひそめているから。

***

手のひらに
黒い切れ切れの道がひろがる。
誰の手にも黒く深く
道は一つに繋がっている。
あなたの未知と繋がる為に
わたしは右手を上げよう。
灯台になったわたしが見えたら、
ゆっくり歩いてきておくれ。
あなたが渡れる鳥ならば
あなたを導く風になろう。
ときに荒く、
ときに穏やかに、
水平線の彼方に見えるものは
十字架が浮かぶ島。
夜が囁きだしたら祈ろう。
指しだした指の向こうにひかる
南十字星に。



自由詩 十字架が浮かぶ島 Copyright あおい満月 2015-06-25 21:20:23
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