湖畔にて
ヒヤシンス


 朝夕と寒さの残る白樺湖のほとりの美術館で娘と戯れる。
 初めて間近に見る大きな影絵は色鮮やかに娘の眼前に聳え立つ。
 後往く月この戯れが続くのだろう。
 残された日々はあまりにも短く感じる。

 輝く娘の瞳に妻と私は目を細める。
 つないだ娘の手の熱さが私に伝わり、
 静かで高尚なひと時が過ぎてゆく。
 影絵の中の女の子が私らを見て微笑んでいる。

 厳かな造形美と一歩外に出れば広がる自然美とに包まれて、
 後どのくらいの善と美を体感させることが出来るのだろう。
 白樺が林立する湖畔にうっすらと靄がかかっている。

 娘の成長と共に感じられる寂寥感は、
 四季折々を描いた影絵に委ねられる。
 祈りにも似た感情が湖畔に吹く風のように胸を貫いてゆく。

 


自由詩 湖畔にて Copyright ヒヤシンス 2015-06-25 03:46:34
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