湖畔にて
ヒヤシンス
朝夕と寒さの残る白樺湖のほとりの美術館で娘と戯れる。
初めて間近に見る大きな影絵は色鮮やかに娘の眼前に聳え立つ。
後往く月この戯れが続くのだろう。
残された日々はあまりにも短く感じる。
輝く娘の瞳に妻と私は目を細める。
つないだ娘の手の熱さが私に伝わり、
静かで高尚なひと時が過ぎてゆく。
影絵の中の女の子が私らを見て微笑んでいる。
厳かな造形美と一歩外に出れば広がる自然美とに包まれて、
後どのくらいの善と美を体感させることが出来るのだろう。
白樺が林立する湖畔にうっすらと靄がかかっている。
娘の成長と共に感じられる寂寥感は、
四季折々を描いた影絵に委ねられる。
祈りにも似た感情が湖畔に吹く風のように胸を貫いてゆく。