おかえり
きりえしふみ
洗面器に顔を近づける要領で
わたしは水面を覗き込んだ
ひんやりした柔らかい手がわたしの頬におかえりと言った
ぷくぷく…彼はそんな言葉でおかえりと言った
久しぶりの感覚だった
あなたの手は何十年の時を経ても
わたしの髪を子供のように優しく梳く
『もう、わたし、とっくに大人になったのよ』
構わずあなたはただ優しく
泣いて良いよと呟いた
何の言葉も持たないくせに
海は常に雄大だった
ただ、そこにある
それだけで…
(c) kirye shifumi 2015/06/22
自由詩
おかえり
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きりえしふみ
2015-06-23 08:39:58
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