胸焼け
やまうちあつし
窓の外は夕焼けだった
西の空が燃えてしまうのじゃないかと
男は本気で心配をした
世界が端から燃えてゆくなら
何を持って逃げようか
あの手紙
あの写真
あの画集
あの女
一体どこへ逃げるというのか
失敗した詩の原稿に
マッチで火をつけたような燃え方だ
みるみるうちに
街が橙に染まってゆく
たまらずにペンとメモ帳を掴んで
表へ駆け出してゆく
男の心は火事だった
自由詩
胸焼け
Copyright
やまうちあつし
2015-06-21 16:54:46
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