呼吸
あおい満月


何かを食べる。
咀嚼する。
ばりばり、
見えない何かは消えていく。
(求めてはいけないよ、自然にかえればいい。)
そう肩を撫でられても、
わたしは雑踏の海を
溺れながら泳ぐ。
水を含んだ、
梅雨の空気が
肌にはりつく。

求めてはみえないもの。
机の上に拡げた
新聞はなにも教えない。
自らの手のひらに
釘をうちつけた真実だけが、
赤い熱になり
生きる意味を教える。

叩き割った鏡の
破片に映った
目の色がかわる瞬間を忘れるな。
服を脱いでいく。
皮膚を剥いでいく。
血管を破って
骨を削いでいく。
求めることを、
求めないなら、
もっともっと空になる。

そうして気配だけを遺して、
また誰かの呼吸になる。
手を繋ぐ。
この熱が伝わったなら、
その身体に、
わたしは宿る。


自由詩 呼吸 Copyright あおい満月 2015-06-21 14:38:38
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