記念日
アンテ

とてもはずかしい過去が
前触れもなく頭のなかに広がって
それはたいてい
取るに足りないできごとで
でも忘れられない理由を
ほんとは知っている

とても大事な思い出に
溺れないためだ

絶対に忘れないよって
誓った記念日
今でも覚えている
毎年同じ日に思い出作りなんかして
タイムマシーンがあるなら
やめさせに戻りたい
ああ でも
ケンカしなければ
今でも続いてたのかな

同じ夏の日
ギラギラした太陽に急かされて
思い出の道をたどってみる
携帯電話で道順をたしかめながら
でも案外
記憶そのままだった
こんな時に限って
取るに足りない記憶がやってこない
神社の境内
脇道を抜けるのが近道
幽霊屋敷に出くわしそうな藪の
その先に

なにやっているんだろうあたし
もうよそう

来週また
花火大会が来る
あの時
いっしょに出かけようって
約束したのに
どうして離れてしまったんだろう
あいつ
別のだれかと行くのかな

誘われちゃった
って言ったら
どんな顔するかな
ばったり出くわしたら
笑えるかな

雲ひとつない空で
太陽がギラギラしている
ジュース買って
休憩しよう
でも
自動販売機も
ちょうどいいベンチも
藪の向こう側だ

さよならした場所だ

やっぱり
行ってみようかな



「Poison」 #8
inspired by ぽわん 「8/6」



自由詩 記念日 Copyright アンテ 2015-06-19 01:58:13
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Poison