テトラミド
あおい満月

きのうとあすが
なわとびをする
たった一つの錠剤が
スプーンでかきまぜた珈琲になって
前頭葉を支配する
誰も気づかない
この脳が砂を掴んで
やわらかなくにを潰そうと
黄色くなった目が狙っていることを


耳から、
社会のなきごえが
入ってくる
保険料の増額
非課税の母親の
目の下は酒量の度に濃くなっていく

**
身体中に電流がはしる
テトラミドは何も
運んではきてくれない
指をおりながら
日々をかぞえる
あたしがこの席にいられるのは
あとどれくらいだろう
解雇通告の肩を叩かれる音が風にひびく

深く深く
血はねむる
いつかふたたび
ほとばしるまで


※ テトラミド…抗鬱剤。脳に作用し、神経を活発化させる。


自由詩 テトラミド Copyright あおい満月 2015-06-14 14:38:07
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