Vitality/ カナブン


高層ビルの屋上
この世とあの世の境目に放り出した片足

目を閉じ 胸に手を当てて 聞く最後の独奏

目を開けると美しく没する夕日

カサカサと音がして視線を下に逸らすと

この世に残した片足の横で見苦しく足をバタつかせる
胴が半分に割れたカナブン

雄々しい演説家ように激しい身振りで何かを伝えようとする彼の一挙一足に目を奪われる

ひっくり返って 顔色一つ変えない空を説得しようと 懸命に振るっていた彼の長い手足がラストに向かって加速して行く

やがて
雄弁な演説家は歯切れのよい台詞の後 永遠に続く 句読点を置くと
満足した顔で舞台を後にした

片足をこの世に戻し 濡れた顔を上に向ける
相変わらず顔色一つ変えない空が
何食わぬ顔で僕を見下ろしている

クソッタレ

激しい苛立ちの後 訪れた喉の渇き
満たすために鷲掴みした
キャップのなくなったペットボトル
中身を一滴残らず飲み干して
再開する命のディベート



自由詩 Vitality/ カナブン Copyright  2015-06-14 09:31:33
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