石ころを、たべる/即興ゴルコンダ(仮)投稿.45
こうだたけみ
バレンタインにもらった砂利みたいな
チョコレートうれしくってポケットに
突っ込んだ手で握りしめてもぜんぜん
溶けなくってへんだな一粒口に入れて
みたらこれっぽちも甘くないってやつ
ぼくの片思いは一瞬でうちの庭の土の
上に散らばった。
散らばった石ころは
水にすすがれて角が取れ丸みを帯びる
からだ、が邪魔だから大人になんてな
りたくないよいつまでもちっちゃい手
をつないできみところころ転げ回って
いたいからわたし残らず拾い集めて渡
したんだそっと寒いさむい冬の日に。
日に日に夏が近づいて来るその前には
いつだって梅雨がある雨が降って道を
洗って尖った砂利が丸くなって緑のガ
ラスの破片が丸くなったのが好きだっ
た磨りガラスみたく鈍く光るガラス玉
見つけると宝物にしてたね知ってたん
だ言わないけど。
言わないけどあの日
渡した石ころはまだ持ってるのって聞
いてみたい宝物も混ぜておいたんだけ
ど知らないよねきみはもう女の子、と
なんか遊ばないってうさちゃんのぬい
ぐるみさえも投げやって箱ブランコか
らもいなくなって今はどこにいるの。
いるのにいないと言うのは寂しいこと
ですいつも一緒だったボロいぬいぐる
みは母が大事に飾っています押入れの
片付けをして出てきたもう小さくって
履けなくなったズボンのポケットに緑
のガラス玉が一粒入っていてふと思い
出すきみと石ころと少しだけ苦い味。