空鳴り
レタス


あの頃の街は灰色に閉じ込められて
誰もが外に出なかった
紅いダリアが咲いているというのに

入道雲が空を鳴らしていたあの日
浴衣姿で空に消えて往った

ぼくは哀しみを理解できず
ただただ歩きまわっているだけ

廃墟となった球場の外野席の上に立ち
白い指で教えてくれた東京タワー

涙する姉さま
ぼくの手のひらを握りしめ
何も言わずに
握り返した

還ってきたのは
ただの白い壺

残された記憶


自由詩 空鳴り Copyright レタス 2015-06-12 00:08:22
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