飛ぶ日 むらさき
木立 悟






やはり雨は
雨を招んでしまった
風の無能
鏡の前の
左脚の羽化


鳥が降り
見えなくなる
くりかえし降り
陰を ふくらませる


鏡の前で倍になり
曇は海へ吹いてゆく
羽を持つもの 動かぬものに
灰と緑は打ち寄せる


湿った坂を下りてゆく花
低い空に撒かれる花
暗がりを照らす
水とむらさき


木の芽や棘が
光の行方を指している
遠く遠く
湖の上に浮かぶ文


日の終わりの鱗
砂のなかの眼
背の色を伝わる
曇と指の子


空に去る 鏡に去る
水に去る
羽とむらさきの
みなもとに去る


忘れたものを思い出せず
遠い水の跡をなぞりながら
風に幾度もひらく手のひら
戻らぬ骨格にかがやいてゆく





























自由詩 飛ぶ日 むらさき Copyright 木立 悟 2015-06-10 23:54:17
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