JAZZが流れていたりした。
元親 ミッド
キミの笑顔が見れた日は、
見上げた空が曇っていても、降り注ぐ無数の滴が
宝石のように弾けるのを見て
街全体が、打楽器のようにリズムを奏で
耳を澄ませば、そこにもJAZZが流れていたりした。
キミの笑顔が見れなかった日は、
大通りの並木が、みな葉を散らしてしまってて
その向こうの、ひび割れた秋空の、青い破片が冷たくて
石畳の上の黄色い絨毯を、とぼとぼ歩き
街全体が、管楽器のようなコード進行で
難しそうな、JAZZが流れていたりした。
辿り着いた海辺に立って
重く濁った波を眺める。
冷たい、見えない糸が世界を背後に引っ張っている。
踏ん張れないモノから、糸がどこかへと浚っていく。
目を細めると、遠くで飛んでいる海鳥が、
青い鍵盤を弾いている。
ちょっと傾いた電柱の間に張られた数条の線を
見えない糸が掻き鳴らし、弦楽器のような切なさで
そしてやっぱりJAZZがあった。
いつか誰かを愛することができるのは、
かつて誰かから愛されたことがあるからだと
JAZZが言っている。
街ゆく人々の雑踏が寡黙であっても
そびえ建つビル群が深い渓谷を成していても
闇は、悪などではなく
光は、正義とは限らず
それを一方的に人が思い込みで決めているだけで
その日一日見るものすべてが
JAZZなのは、
きっとキミの笑顔のせいだよ。
ただ、キミの笑顔が見たくって
どうして見たいのかっていわれてもわからないけど
ただ、キミの笑顔が見たくって
僕は、どんな手間がかかってもいいから
キミのいるあの場所へ 赴かずにはいられないんだよ。