五月の夜
塔野夏子
青い闇の底
鍵盤が滴る
それらを奏でる指たちは
烏座の方角からやってくる
遠くにたたずむほの白い光圏の
愁いと呼応するカーテンの揺らめき
漂う柑橘の花の香が
ふとひとのかたちをとり
またほどけた
自由詩
五月の夜
Copyright
塔野夏子
2015-06-07 21:45:26