銀狼
一筆

狼狼と遠く哭け

逆立つ体毛の針先に
銀の水滴をほとばしらせて
疾走する闇の底

毒毒
独独
激しく胸を打つ響き

叩き潰された虫の死骸
赤でも青でもない色に染まり

涙草 露をため
灼熱の吐息に枯れてゆく

月光をまとえば
人の姿に交われもしよう
爪と牙を覆い隠しても
本能だけは知っている
皮膚を突き破る骨の痛み

混沌
あれは人じゃない
混沌
これは獣じゃない

廻り続ける水車の葛藤
無限の流れを止めてくれ

呪いの系譜は累々と受け継がれる
誰かの贄とひきかえになら
連鎖の衝動を殺せるのか?

したたり落ちる水の音
黒く点々と痕跡を残し

誇り高く生き耐えながら
埃にまみれ息絶えて死ね

甘露雨はまだ来ない



自由詩 銀狼 Copyright 一筆 2005-02-10 13:10:47
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