明け方に
ヒヤシンス


 湖岸に立つ私に風は爽やかで
 静寂の中に鳥たちの声が聴こえる。
 靄のかかった湖面から小枝が屹立する情景は
 私に生命力の尊さを教えてくれる。

 静かに歩み寄る初夏の足音に耳をすませば
 昨日までの日常が嘘のように流れゆく。
 鳥たちの歌声が空間を駆け巡るとき
 私は命のありがたみを今再び感じるのだ。

 人生を長く感じるか短く感じるか
 そんな感覚は今ここに在る自身の心次第で
 なぜだか湖面に広がる波紋のように揺らめいている。

 さぁ行こう。奢りもなく昂ぶりも今は控えよう。
 ただこの一瞬は心穏やかに。
 自然に包まれた光景に今こそ訪れる魂の静かな放出。

 


自由詩 明け方に Copyright ヒヤシンス 2015-06-06 05:32:42
notebook Home