裏切り
葉leaf




裏切りは
地の果てへといずれ続く
人のいない棺
花々でいっぱいだけれど
人間が不在である
次々とメロディーを殺戮していく
華やかな波動

私は人を裏切ったことが
愛する人を裏切ったことが
そして私自身も裏切ったことが――
棺には失った愛の形だけが詰められ
強雨と海との境目に
つまりは私の流体時間の研ぎしろへ
結ばれなかった二つの愛の末尾を
別々に棺は流れる

私は人から裏切られたことが
信じていた社会から裏切られたことが
基づいていた真理から裏切られたことが――
棺はそもそも棺ですらなく
棺にすら裏切られて
私は自らを収める適当な懐疑
その新たな神のために
手製の棺を作り出し懐疑の神すら葬送した
過去の根源と現在の倫理との
命が出会う未開の地において


自由詩 裏切り Copyright 葉leaf 2015-06-06 03:20:56
notebook Home 戻る