腕を上げたら
小川麻由美

寝起きの
かすれた視界でも
はっきりと片腕が
太いのがわかった

昨日
止血したせいかと思う
腕をまっすぐ上げよう
治るかもしれない

すると
タクシーが止まってしまう

横断歩道で車が渋滞になる

体育祭で選手宣誓をする

呼ばれているのかと
勘違いした人々が
こちらに向かってくる

この指止まれの遊びをしている
子供たちが寄ってきて
跳ねている

虐待を受けてきたであろう猫が
おびえて耳をたたむ

極端に一糸乱れぬ行進に
参加して独裁者を讃えている
一刻も早くこの場を去りたい

そうだ
手を下げてみよう
少しは治ったようだ
慣れない光景も消え去った
とにかく元に戻って良かったと
腕をさすりながら
身体を実感した


自由詩 腕を上げたら Copyright 小川麻由美 2015-06-06 02:06:15
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