遠吠え
楽歌


月が哭いている。
明日は嵐になるという。

茜色の感情だけが、夜に紛れることが出来ずに怯えている。
藍色は相変わらず。そういうことにだけは巧みに生きていける。

哀しみを通り過ぎた虚しさが、窓枠にしがみついたままで、
カーテンを締める手が、少しだけ躊躇ってみせた。

化粧水の粒が、手のひらで身を震わせている。
はだ、に
弾けて、ほとり。

小細工を繰り返しては、女で在ろうともがくたびに、
下腹部の火照りだけ、置き去りのエチュード。


あなたを待っていたいのです。


名も知らぬままに、
ひとつ、ふたつ、みっつ。

焦がれては痛みと覚え、
よっつ、いつつ、むっつ。

こゆびに、髪を絡ませては、また。
ななつ、やっつ、ここのつ。


こんじきの、ゆめだけが、

とおく、とぉく。


自由詩 遠吠え Copyright 楽歌 2015-06-02 09:43:43
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