Ruth
mizunomadoka

ミニバンをドライブインに停めた
好きなものを食べなさいと言った
電話してくるからと席を離れ
子供たちを捨てて逃げた

ドアを閉めると大きな音がした
ハンドルを握る手が震えた
もっと離れた場所に車を停めればよかった
アクセルを踏んでサイドミラーを見る
誰もいない大丈夫

州境を抜けて時計が一時間戻ったとき
不思議な感覚が襲った
わたしはさっきこの時間に
お腹がすいたと騒ぐアーサーとルースとキャサリンを
この車内でなだめていたのだ

まだ引き返せると思った
いやだもう戻りたくない

パーキングにコインを入れて
エアバスを待った

空港に着くとあなたがチケットを振った
わたしは泣いていた
あなたはキスをして
わたしの頬に手を添えてから唇を離した
こんなこと誰もしてくれなかった



「後悔はしてないわ。だって、とても幸せだから」と
マリアは言った

「魔女になってもいいから、ずっと若く美しいままでいたいの」と
キャサリンは泣いた

「世界が二重に見える」と吸血鬼は言った
「兄と妹が普通の人間だったからかもしれない」



ママが席を離れるとアーサーも「トイレ」と言って席を立った
小声でキャサリンに「お兄ちゃんのオレンジを食べちゃおうよ」と言うと
あの子は嬉しそうに目を輝かせた
一番素敵な日曜日だった

新しい家に着いたら犬か猫を飼ってもよくて
庭にはブランコがあって
自分専用の部屋があるなんて







自由詩 Ruth Copyright mizunomadoka 2015-06-01 13:05:40
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