RPG
平井容子
肌が透けるようなTシャツを着たきみが
キッチンで小さな竜のぜいごを削ぐ
なんの予感もない薄暮の中
麦茶が冷えている
夕はんの後の散歩はいつも同じコースで
途中、24時間やっているあの店の
炭酸水を2本と、2番目に安い食パンと、6個入りの卵
もう何も迷わない手つきで選んで買っていく
今なら
きみが本当は曲がりたかった角がわかる
同じところをぐるぐると回るような日々の卒塔婆は
きっと安っぽいアイスの棒
何もわからないそぶりのきみはまるで大人だった
やがて
消えてしまった言葉を泣きながら探す
ぼくたちは最後の世代となるだろう
きみは
なにもふせぐことのできない
青白い肌を翻して
日の落ちた青黒い街へ
ぬるっと溶けていった