サーカスを見にいく
じぇいぞろ
水たまりが銀色に太陽を反射していた。
午前中の予定を終わらせて、
冷蔵庫から低脂肪乳を出して
ラッパ飲みした。
NHKの集金人がやってきて、
インターフォンを押している。
郵便局員が納税通知を持ってきた。
南から風が吹いて、
燕が懐かしい両親の声を運んできた。
「サーカスを見にいこう」と父が
言っている気がした。
どこかでやっていないか、
いんたーねっとで調べる。
それから新幹線を予約した。
何十年も前からあるソファにお行儀よく
腰掛けて、「ちびくろサンボ」を読んだ。
昔、母が読んでくれたときは
新品の匂いがしたのに、今は黴臭い。
はぐれ雲が
浅葱色の空に貼り付いていた。