異種交配ホテル
じぇいぞろ

ごご11時の
プライベートビーチに
椅子がひとつだけあり、
ボクはそこに座っていた。

鰯のアタマをしたボーイが来て、
「申し訳ありませんが
そちらは予約席でして」と言う。

「別に構わないじゃないか」というと、
「そちらの席は満潮になると
海の底に沈んでしまうのです。
しかも、
今夜は予約が入っておりまして。」

うにのアタマをしたウェイトレスが
注文したフローズンダイキリを運んできた。

「わかったよ」とグラスを手に立ち上がると、
周囲には何もなくなっていた。

瀟洒なリゾートホテルも、
鰯のボーイもうにのウェイトレスも。
椅子とボクだけを残して。

予約客は現れなかった。

完全なる暗闇。

ボクは椅子に座って、
ダイキリを飲みながら、
暗い海をぢっと睨んだ。

満潮の時間が近づいていた。



自由詩 異種交配ホテル Copyright じぇいぞろ 2015-05-20 20:50:17
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