とおくなる
オイタル

春。白い陽が田んぼを巡る
  水を濁らす影の下を
  小さな蛇が逃げる

夏。雑草が炎のように燃え上がる
  草草を分けてゆく胸のあたり
  葉先より高く虫が跳ねる

秋。抜き取られた稲杭の穴にカエルが潜む
  泥に落ちた手ぬぐい
  藁を燃やす煙

冬。靄を透かして太陽が山際を滑る
  走り去る生き物
  空の向こうで木をたたく音

遠くなるあなたたち
わたしたち


自由詩 とおくなる Copyright オイタル 2015-05-17 05:56:39
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