マイナス2度
じぇいぞろ

昨年海水浴に行った彼女が入院した。

また、夏が来て、
ボクはその海水を
苺ジャムのビンに入れて、見舞った。
水は青くもなく、
きらきらと光を反射することもなく、
濁っていたが、君は躊躇せず蓋を開けて「海の匂いがする」と言った。

それから、秋には銀杏と紅葉の葉、
芋虫が出るから要らないと言ったどんぐり、
冬にはマイナス2度の外気と積もりたての雪、
春にはビンいっぱいの桜の花びらを
持っていった。

今日君のいなくなった個室の前まで
海水を持ってきたのだが。

ボクはビンの蓋を開けて、
そっと匂いを嗅ぐ。

「海の匂いだよ」とそっとつぶやく。







自由詩 マイナス2度 Copyright じぇいぞろ 2015-05-15 20:55:44
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